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こんにちは、まーです!
前回、A1 miniでフィラメントが途中で抜ける問題の原因を徹底的に解剖しました。段ボールスプールの摩擦、ベアリングなしのスプールホルダー、eSUNの巻き品質、エクストルーダーの摩耗、ホットエンドの詰まり。いろんな原因がありましたよね。
今回はお待ちかねの対策編です。お金をかけずに今すぐできるDIY対策から、低コストのベアリングで根本改善を狙う方法、エクストルーダーのメンテナンス、さらには診断フローチャートまで、対策を全部お話しします。
今日の構成
今日は4つのパートでお届けします。
①今すぐできるDIY対策。ビニールテープ、BB弾ベアリング、シリコングリス。家にあるもので今日から始められる方法です。
②本格的な解決策。608ベアリング付きスプールホルダーとeSUN専用アダプター。
③エクストルーダー、PTFEチューブ、ホットエンドのメンテナンス。
④自分の症状に合った対策を見つける診断フローチャートと、トラブルを未然に防ぐ予防メンテナンスチェックリスト。
パート1:今すぐできるDIY対策
対策① ─ ビニールテープ巻き(コストゼロ)
最も手軽で即効性がある方法からいきます。段ボールスプールの外縁にビニール電工テープを巻くだけ。コストはほぼゼロです。
段ボールのザラザラした表面が、テープの滑らかな表面に変わるので、スプールホルダーとの摩擦が劇的に改善します。
ポイントは、スプールの両側の側壁、フランジと呼ばれる部分にテープを巻くこと。ここがホルダーと接触して摩擦を生んでいるので、ここを滑らかにするのが一番効きます。
テープは電工テープなど表面が滑らかなものが使われることが多いです。ただし、テープの種類や使用環境によっては粘着が残ったり、逆に滑りが悪くなることもあるので注意してください。
コミュニティでもよく使われている簡易策で、Bambu Labのフォーラムでも紙スプール対策として紹介されています。これだけで改善したという報告もありますが、すべてのケースで有効とは限りません。
対策② ─ BB弾ベアリング(日本発のDIY)
次は日本ならではのDIYソリューション、BB弾ベアリングです。
ダイソーで売っているエアガン用のBB弾を使って、簡易ベアリングを自作するという方法。段ボールスプール専用の摩擦対策として、日本のメイカーさんが考案しました。
BB弾がボールベアリングの玉の役割を果たして、スプールの回転を滑らかにしてくれるんです。改造後は、軽くフィラメントを引くだけでスプールが回りやすくなるケースがあります。
材料費を安く抑えやすいのが魅力で、BB弾は100円ショップなどでも手に入りやすいです。ただし、代表的な作例では3Dプリント部品を使うものもあるため、完全に市販品だけでできるとは限りません。
対策③ ─ シリコングリス塗布

もう一つの手軽な方法が、スプールホルダーのスピンドルにシリコン系の潤滑剤を少量使うことです。
注意点は「少量」ということ。塗りすぎると潤滑剤がスプールに付着して、周辺を汚す可能性があります。ごく薄く均一に塗るのがコツです。
この方法は応急処置として効果が出る場合がありますが、長期的な安定性を考えると、ベアリング付きホルダーのような低摩擦化の方が本命です。
パート2:本格的な解決策
対策④ ─ ベアリング付きスプールホルダー(608ベアリング)
最も効果的で恒久的な解決策が、低摩擦スプールホルダーへの交換です。これが今回の対策で一番おすすめの方法です。
代表的なのが608ベアリングを使う方式。608ZZベアリングは、外径22mm、内径8mm、厚さ7mmの標準的なベアリングです。入手しやすく、通販などでも広く販売されています。
ただし、608ベアリング方式以外にも、ニードルベアリング式や3Dプリントベアリング式の人気モデルもあります。自分の使うスプールに合わせて選ぶのがポイントです。
スプールホルダー自体は3Dプリンターで印刷します。MakerWorldやPrintablesにたくさんのモデルが公開されていて、全部無料です。
ベアリングを入れると、段ボールスプールでも回転抵抗がかなり減り、よりスムーズに回るようになります。フォーラムでも改善報告が多く、紙スプール対策として有力な方法の一つです。
おすすめベアリングホルダーの比較
具体的にどのモデルがおすすめかを紹介します。
①「FRESH」。Friction-Reducing Spool Holderの略で、8×12×10mmのニードルローラーベアリングを使う方式です。純正ホルダーと近い構成で使えるので、見た目を大きく変えたくない人に向いています。
②「Low Friction Adjustable」。3Dプリントしたベアリング構成で、68mmから80mmまでの幅調整ができるモデル。段ボールスプールはメーカーによって幅がバラバラなので、いろんなメーカーのフィラメントを使う人にはこれが便利。
③「Lowest Friction Spool Holder」。円錐形の端でセルフセンタリングしてくれる低摩擦アダプター型で、55mmから76mmのスプール穴に対応します。
印刷素材はPETGが選ばれることが多いです。PLAでも使えますが、使用環境や荷重によっては変形しやすくなる可能性があります。
一つ注意点として、回転が軽くなりすぎるとスプールが惰性で回りすぎる場合があります。その場合は、抵抗を少し増やして回りすぎを防ぐ調整が必要になることがあります。
対策⑤ ─ eSUN専用アダプターとeSUN公式ソリューション
eSUNの段ボールスプールに特化したアダプターもあります。
実はeSUN公式でも、紙スプール向けの専用アクセサリのSTLファイルを公式サイトで無料配布しているんです。メーカー自身が対策品を出しているのは好感が持てますよね。
コミュニティが作ったアダプターもたくさんあって、たとえば接触面積を50〜60%削減するリングタイプ。段ボールスプールの両側に取り付けて、ホルダーとの接触面を小さくするもの。
もっと大胆なのは、段ボールの側壁を3Dプリント製に完全交換してしまうモデル。段ボールの内側のハブだけ残して、外側を全部プラスチックに置き換えるんです。
eSUNのスプールをメインで使っている人は、まずメーカー公式のソリューションを試してみるのが安心だと思います。
パート3:メンテナンス
対策⑥ ─ エクストルーダーのチェック手順
スプールホルダーを改善しても問題が続く場合は、エクストルーダーの点検が必要です。
①まず電源を切る。これは鉄則です。
②H2.0の六角レンチでエクストルーダーの側面ネジを外します。
③ブラケットを慎重に取り外す。ここが一番の注意ポイントで、スプリングとエンドキャップが勢いよく飛んでいくことがあります。小さいトレイの上で作業するのがおすすめです。
④スプリングリテーナーという金属キャップが正しい向きで装着されていることを確認。小径側がスプリングの内側、カップ側がネジ側です。
⑤再組立て時に、スプリングが圧縮されて、駆動輪ブラケットがしっかりフィラメントに押し当てられていることを確認。
もしリテーナーを紛失してしまった場合は、MakerWorldに3Dプリント製の代替品があります。
一つ大事な注意点。A1 miniのネジ受けは樹脂製なので、不必要な分解を繰り返すとネジ山が劣化します。分解は本当に必要な時だけにしてください。
ギアのアップグレードとテンション調整
エクストルーダーのギアが摩耗している場合は、交換を検討してください。
A1シリーズのエクストルーダーは純正でも焼入れ鋼のデュアルギア構成です。摩耗や詰まりがある場合は、ギアアセンブリ単体での交換がBambu Lab公式ストアで可能です。
サードパーティだと「BIQU Panda Claw」が人気ですね。ゴールドナノコーティング鋼にアルミCNCハウジングという仕様。他にもDLCナノコーティングのギアキットもあって、一体型シャフト設計でダブルベアリング搭載のものもあります。
テンション調整も大事です。CNC KitchenのStefan Hermannさんの知見によると、フィラメントにギアの跡がほとんどない場合はテンション不足。逆にフィラメントが激しく変形したり削られている場合はテンション過多です。
対策⑦ ─ PTFEチューブの最適化
PTFEチューブも重要なチェックポイントです。
チューブの曲がりを最小限にすること。MakerWorldには専用のPTFEチューブガイドが公開されていて、チューブが急角度で曲がるのを防いでくれます。
チューブの端が摩耗していたり裂けていたら交換時期です。専用カッターで端面を垂直にカットすると、フィラメントの通過抵抗が下がります。
チューブの選び方ですが、純正の4mm外径/2.5mm内径のチューブが最もパフォーマンスがいいです。サードパーティの4mm/2mmのものは内径が0.5mm細い分、抵抗が増えるので注意してください。
対策⑧ ─ ホットエンドの詰まり除去
ホットエンドの詰まりに対する対策は「コールドプル法」です。
①ノズルを高温に加熱して、フィラメントを手で押し込む。PLAなら230度前後が目安です。
②温度を下げて、フィラメントが固まり始めるけどまだ引き抜ける抵抗が出る温度域まで待つ。
③フィラメントをゆっくり、でもしっかりと引き抜く。
ノズル内部の詰まりの原因になっていた残留物が、フィラメントの先端にくっついて一緒に引き出されます。先端が綺麗な円錐形になっていれば成功。汚れている場合は何回か繰り返してください。
それでもダメな場合は、250度に加熱してクリーニングニードルでノズルの先端から突く方法もあります。
対策⑨ ─ 外部スプールホルダーとリスプール
さらに根本的な解決策を2つ紹介します。
①外部スプールホルダー。プリンターの上方にスプールを設置して、重力でフィラメントが自然に落ちてくるようにする方法です。PTFEチューブの曲がりが最小化されて、摩擦が大幅に減少します。
②リスプール。eSUNの段ボールスプールからフィラメントをBambu Lab製のリユーザブルスプールに巻き直す方法です。段ボールスプールの問題を完全に排除できます。手間はかかりますけど、毎回の印刷中断ストレスから解放される価値がありますよね。
パート4:診断と予防
診断フローチャート
自分の症状がどの原因に当てはまるか、ここで整理しましょう。
「段ボールスプールを使っている」→ 最優先はベアリング付きスプールホルダーへの交換か、ビニールテープ巻き。
「ギアは回転しているのにフィラメントが進まない」→ スプリングやギアのテンション不足が疑われます。エクストルーダーを開けてギアの歯を確認。
「PTFEチューブ内でフィラメントが折れる」→ フィラメントの乾燥を最優先に。チューブ内に折れた破片が残っていないかも確認。
「クリック音やガリガリ音がする」→ ノズル詰まりのサインです。コールドプルを試してください。
「断続的にエラーで停止する」→ スプール抵抗、フィラメントセンサー、PTFEチューブ接続の順に確認。
「特定のフィラメントでのみ発生する」→ 素材固有の問題の可能性が高いので、Bambu Lab純正のPLA Basicでベースラインテストをしてみてください。
予防メンテナンスチェックリスト
トラブルが起きる前にやっておくべきことをリストにしました。
①印刷前にフィラメントを1メートルほど手で引き出して、スムーズに巻き戻せるか確認。引っかかるようなら、スプールの巻き状態をチェック。
②100時間から200時間ごとに、エクストルーダーのギアの歯の摩耗チェックとスプリングテンションの確認。
③フィラメント交換時は、先端を必ずスプールの穴に固定する。これを忘れると、次回使う時に絡まりの原因になります。地味だけどめちゃくちゃ大事。
④段ボールスプールは、初回使用前にベアリングスプールホルダーかビニールテープを適用する。問題が起きてからじゃ遅いです。
⑤高湿度環境では、PLA+は使用前に乾燥。密閉容器と乾燥剤で保管するのが基本です。
⑥エクストルーダーを分解した後は、スプリングリテーナーの位置と駆動輪ブラケットのテンションを必ず確認。
⑦PTFEチューブは定期的にチューブ端を点検。摩耗や裂けがあれば早めに交換してください。
まとめ:対策の優先順位

フィラメント抜け問題の対策を優先順位でまとめます。
①ベアリング付きスプールホルダーへの交換。608ベアリング2個で300円程度。費用対効果が一番高い対策だと思います。
②ビニールテープ巻きで応急処置。すぐにベアリングが手に入らない場合はこれだけでも相当改善します。
③エクストルーダーのスプリングとギアをチェック。
④PTFEチューブの確認と交換。
⑤ホットエンドのコールドプル。
この①から⑤の順番で対処していけば、多くのケースで改善が期待できます。
前回と今回の2回にわたって、A1 miniのフィラメント抜け問題を原因から対策まで徹底的にお話ししました。
次回予告
次回はシリーズ最終回、まとめ編です。
そもそもなぜ段ボールスプールがこんなに増えているのか。環境配慮という流れの中で、メーカーによって品質にどれくらい差があるのか。eSUN、Polymaker、Sunlu、Bambu Labのアプローチを比較します。
そして段ボールスプール時代のフィラメントの選び方、買った後のチェックルーティン、保管のベストプラクティスまで。フィラメント抜け問題を入口に、これからのフィラメントとの付き合い方をお話しします。
エンディング
このチャンネルでは、Bambu LabのA1 miniなどの3Dプリンターを中心とした技術などを毎日更新でお伝えしてます。
では、また次回。
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