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こんにちは、まーです!
前回、前々回と、A1 miniのフィラメントが途中で抜ける問題の原因と対策を徹底的にお話ししてきました。
原因編では、段ボールスプールの摩擦やエクストルーダーの限界など9つの原因を解剖。対策編では、ベアリングスプールホルダーやDIY対策、診断フローチャートまでお伝えしました。
シリーズ最終回の今回は、ちょっと視点を変えます。
そもそもなんで段ボールスプールがこんなに増えているのか。メーカーによって品質にどれくらい差があるのか。そして段ボールスプール時代に、僕たちユーザーはフィラメントの選び方や管理をどう変えていけばいいのか。
フィラメント抜け問題を入口に、もっと広い視点でフィラメントとの付き合い方を考える回です。
今日の構成

今日は4つのパートでお届けします。
①段ボールスプールが増えている理由と、ユーザーへの影響。
②メーカー別の段ボールスプール事情。eSUN、Polymaker、Sunlu、そしてBambu Labのアプローチを比較します。
③段ボールスプール時代のフィラメント選び&管理術。買う前にチェックすべきポイントと、買った後の保管・運用のベストプラクティス。
④3回シリーズの総まとめ。
パート1:段ボールスプールが増えている背景
なぜ段ボールスプールが増えているのか

ここ数年で、フィラメントのスプールをプラスチックから段ボールや紙系素材に切り替えるメーカーが目立ってきています。PolymakerやeSUNを中心に、段ボール系スプールや紙系スプール対応を進めるメーカーが増えてきました。
理由として大きいのは環境配慮です。1kgのフィラメントを買うたびに200g前後のプラスチックスプールがゴミになる。年間何十本もフィラメントを消費するユーザーにとって、空スプールの山は結構な問題です。段ボールなら資源ごみとしてリサイクルできる。
加えて、段ボール系スプールへの移行は、環境配慮だけでなく物流・包装設計の見直しとセットで進んでいると考えられます。メーカーにとってはブランドイメージと実務面の両方でメリットがあるんですよね。
これ自体は良いことだと思います。ゴミは減った方がいいし、コストが下がればフィラメントの価格も抑えられる。
問題は、段ボールスプールに切り替えたことで、一部のメーカーで品質管理が追いついていないケースがあること。今回のフィラメント抜け問題がまさにその一例です。
段ボールスプールのメリットとデメリット

段ボールスプールのメリットとデメリットを整理しておきましょう。
メリット。①リサイクル可能で環境負荷が少ない。②軽量なので配送コストも下がる。③プラスチックの空スプールが溜まらない。
デメリット。①摩擦が高い。これは原因編で詳しくお話ししましたね。表面がザラザラしていて、スプールホルダーとの接触面で大きな抵抗を生む。②湿気に弱い。紙系素材なので湿度の影響を受けやすく、保管環境によっては変形や回転抵抗の増加につながることがあります。日本の梅雨時期は特に厄介。③耐久性が低い。側壁のフランジが曲がりやすく、スプールホルダーに接触して回転を妨げることがある。④巻き品質がメーカーによってバラバラ。プラスチックスプールの時は問題なかったメーカーでも、段ボールに切り替えた途端に巻き品質が落ちるケースがある。
つまり、段ボールスプール自体が悪いわけじゃなくて、プラスチックスプールの時に隠れていた問題が、段ボールの特性で表面化しやすくなったという面が大きいんです。
パート2:メーカー別の段ボールスプール事情
eSUN ─ コスパの王者、巻きに課題

まずはeSUN。僕のフィラメント抜け問題の「犯人」です。
eSUNの良いところ。PLA+をはじめ、品質と価格のバランスが非常に良い。カラーバリエーションも豊富で、Amazonでの入手性も抜群。フィラメントとしての性能は本当に悪くないんです。
問題は巻き品質。原因編でもお話ししましたけど、僕の個体やユーザー報告では、使い進めた中盤以降に巻きの乱れや引っかかりを感じるケースがあります。これが突発的な抵抗スパイクの原因になるんです。
eSUNは紙スプール向けのアダプター類を公式に配布していて、運用面の対策手段は用意しています。公式サイトでSTLファイルを無料配布しているのは好感が持てますよね。
eSUNを使う場合のポイントは、ベアリングスプールホルダーの導入がかなりおすすめということと、印刷前にフィラメントを少し引き出してスムーズに引き出せるかチェックする習慣をつけること。
Polymaker ─ 段ボールスプールの優等生

次にPolymaker。PolyTerraシリーズで段ボールスプールをいち早く採用したメーカーの一つです。
コミュニティでは、Polymakerの段ボールスプールは比較的扱いやすいという声も見られます。巻きの均一性が比較的良いという報告が多い印象ですね。
さらにPolymaker自身が専用のカードボードスプールアダプターを案内しています。Bambu系ユーザーも対応モデルを探してみる価値がありますよ。
あと、Prusa Researchのフォーラムでは「PolyTerraの段ボールスプールは湿気を吸いやすい」という指摘もありました。品質は良いけど、保管は気をつけた方がいいということですね。
Polymakerは段ボールスプール問題を環境面から真面目に取り組んでいるメーカーという印象です。
Sunlu・その他のメーカー

Sunluも段ボールスプール採用メーカーの一つです。
Sunluの場合、フィラメントドライヤーを自社で販売しているのが特徴ですよね。ドライボックスに入れてフィラメントを乾燥させながら印刷する運用と組み合わせると、段ボールスプールの湿気問題と摩擦問題を同時に緩和できます。Printablesにはドライヤー用のベアリングローラーModも公開されていて、このセットアップは有効なケースがあります。
Crealityも Hyperシリーズなどで段ボールスプールを採用し始めています。
メーカーごとに方式は違いますが、紙系スプール化やリフィル化など、プラスチック廃棄を減らす方向の動きは確実に広がっています。この流れは今後も続くでしょう。段ボールスプールは「一部のメーカーの特殊な選択」ではなくなりつつあるんです。
Bambu Lab ─ リユーザブルスプール戦略

一方、Bambu Labは段ボールスプールとは違うアプローチを取っています。
Bambu Labは「リユーザブルスプール」を採用しました。プラスチック製の頑丈なスプールを1回買って、次からはスプールなしの「リフィル」だけを買う仕組みです。
リフィルは段ボールの簡易包装で届くので、プラスチック廃棄は最小限。でもスプール自体はプラスチック製なので、一般的な紙スプールよりは回転抵抗の面で扱いやすいことが多いです。
サードパーティのフィラメントを使う場合でも、リユーザブルスプールにリスプールすれば、少なくとも段ボール外周や紙フランジ由来のトラブルはかなり減らせます。MakerWorldにはA1 miniで印刷できるサイズのリユーザブルスプールのモデルも公開されています。
つまり、段ボールスプールの問題に根本的にぶつからない設計思想なんですよね。リスプールの手間はかかりますが、環境配慮とユーザー体験を両立させている点は評価できます。
パート3:段ボールスプール時代のフィラメント選び&管理術
フィラメント選びの新基準

正直に言うと、フィラメントを選ぶ時に「スプールの素材」まで気にしていた人ってあまりいないと思うんですよね。僕も以前はそうでした。価格、色、素材の種類、レビューの星の数。選ぶ基準はそのあたりだったと思います。
でも、今回のフィラメント抜け問題を経験して、「スプールの品質」がフィラメント選びの重要な基準の一つだと痛感しました。
段ボールスプール時代の新しい選び方として、僕が提案したいのは4つのチェックポイントです。
①スプール素材の確認。商品ページに「段ボールスプール」「Paper Spool」と書いてあるか。書いてある場合は、ベアリングスプールホルダーの導入を検討しておくと安心。
②メーカーの巻き品質の評判。フォーラムやレビューで「巻きが雑」「途中で引っかかる」という報告がないか。
③湿気対策の計画。段ボールスプールを買うなら、保管環境も一緒に考えておく。
④メーカー公式のサポート。eSUNやPolymakerのように公式アダプターを配布しているメーカーは、問題認識と対応力がある証拠。
買った後のチェックルーティン

フィラメントを買って開封した後にやるべきルーティンをお話しします。
①開封したら、まずスプールを横から観察。巻きが均一か、フランジ(側壁)に曲がりがないか。段ボールの側壁が変形していたら、手で優しく修正するか、スプールホルダーに接触しないように調整。
②僕はフィラメントを1メートルくらい、ゆっくり引き出すようにしています。途中で引っかかる箇所がないか確認。引っかかりがあったら、その箇所のクロスオーバーを手で解消しておく。
③段ボールスプールの場合、スプールの内穴がホルダーに適合するか確認。きつすぎて回転しないなら、eSUN公式アダプターなどの使用を検討。
④先端をスプールの穴に通して固定。絶対に先端をフリーにしたまま放置しないこと。巻きが緩んで次に使う時に絡まります。
この一連のチェック、慣れれば1分もかからないです。たった1分で何時間もの印刷が無事に完了するなら、安い投資だと思います。
保管環境のベストプラクティス

フィラメントの保管について。
大前提として、段ボールスプールのフィラメントは「開封したら優先的に使い切る」。これが一番シンプルで確実な方針です。段ボールは時間とともに湿気を吸い続けるので、放置すればするほど状態が悪くなります。
長期保管が必要な場合は、密閉容器に乾燥剤を入れて保管してください。100均の密閉コンテナとシリカゲルで十分です。理想を言えばフィラメントドライヤー兼用のドライボックスがあるとベストですが、コスト的に無理なら密閉容器で大丈夫。
ドライボックスを使う場合は、ベアリング付きのローラーModを追加すると、乾燥させながら低摩擦で直接印刷できます。SunluドライヤーやeSUN eBox用のModがPrintablesに公開されています。
あと、プラスチックスプールの空スプールは1つか2つ残しておくと便利です。巻き品質が酷い段ボールスプールに当たった時のリスプール先として使えますから。
フィラメントの状態チェック方法

長期保管後や、しばらく使っていなかったフィラメントを使う前にやるべき状態チェックをお伝えします。
①折り曲げテスト。フィラメントを指でU字に曲げてみてください。明らかに脆くなっていたり、以前より折れやすいと感じたら、吸湿や経年劣化を疑って乾燥を試す価値があります。
②表面の確認。フィラメントの表面がサラサラしていれば正常。ベタつきがあったり、白く粉を吹いたようになっていたら劣化の兆候です。
③径の確認。できればノギスで何箇所か測ってみてください。1.75mmフィラメントはメーカー公称公差を確認しつつ、極端なばらつきがないかを見るのがおすすめです。たとえばeSUN PLA+では±0.03mm表記です。径のばらつきが大きいとエクストルーダーのギアが安定してフィラメントを掴めなくなります。
PLA+でも保管状態によっては吸湿の影響を受けるので、高湿度環境では比較的短期間でも印刷品質に影響が出ることがあります。「買ったばかりの頃はスムーズだったのに、最近なんか調子悪い」と感じたら、まず吸湿を疑ってみてください。
これからのフィラメント運用 ─ 僕の結論

ここまでの話を踏まえて、段ボールスプール時代のフィラメント運用について僕なりの結論をお話しします。
段ボールスプールは今後も増え続けます。これは止められない流れだし、止めるべきでもないと思います。環境配慮は大事です。
僕たちユーザーにできるのは、段ボールスプールの特性を理解した上で、適切に対処すること。
具体的には、①段ボールスプールを多用するなら、A1 miniのスプールホルダーをベアリング付きに交換する。安価な割に効果を体感しやすい対策です。②フィラメントを買ったら開封時にスプールの状態をチェック。③段ボールスプールは開封したら優先的に消費。④保管は密閉容器と乾燥剤。
この4つを習慣にするだけで、少なくともスプール起因のトラブルはかなり減らしやすくなります。
逆に言うと、この対策さえしておけば、eSUNの段ボールスプールでも全く問題なく使えるんです。コスパの良いフィラメントを安心して使えるようになる。それが今回のシリーズで一番伝えたかったことです。
パート4:シリーズ総まとめ
3回シリーズの総まとめ

3回にわたって、A1 miniのフィラメント抜け問題を徹底的にお話ししてきました。
第1回、原因編。フィラメントが「詰まる」んじゃなくて「抜ける」メカニズムを解説しました。スプールの抵抗でギアが滑って、張力でフィラメントが引き戻される。そして段ボールスプール、ベアリングなしスプールホルダー、eSUNの巻き品質を含め、原因は9つありました。
第2回、対策編。優先順位をつけて対策を紹介しました。608ベアリング付きスプールホルダーが費用対効果で断トツ。ビニールテープやBB弾ベアリングの応急処置。エクストルーダーのメンテナンス。診断フローチャートと予防チェックリスト。
そして今回、まとめ編。段ボールスプールが増える業界トレンドの中で、メーカーごとの品質の違い、フィラメント選び・管理の新常識をお伝えしました。
段ボールスプールへの提言

最後にちょっとだけ、メーカーさんへの提言を。
段ボールスプールへの移行は正しい方向性だと思います。でも、ユーザーの印刷体験を犠牲にしてはいけない。
特に巻き品質の管理はフィラメントメーカーの責任です。eSUNさんのように公式アダプターを配布するのは素晴らしい対応ですが、根本的には巻き工程の品質管理を改善してほしい。
そしてプリンターメーカーさんには、スプールホルダーにベアリングを標準搭載してほしい。608ZZベアリング2個のコストなんて、プリンター本体の価格に対して誤差みたいなものです。それだけでユーザーのトラブルが激減するなら、安い投資だと思うんですよね。
段ボールスプールとベアリング付きスプールホルダーの組み合わせが当たり前になれば、環境にも優しく、ユーザー体験も損なわない。そういう未来が来てほしいなと思っています。
エンディング

3回のシリーズ、最後まで読んでくださってありがとうございます。
コメント欄で「自分はこのメーカーの段ボールスプールを使っている」「こうやって管理している」という情報があったら、ぜひ教えてください。皆さんの実体験が、同じ問題で悩んでいる方の助けになります。

このチャンネルでは、Bambu LabのA1 miniなどの3Dプリンターを中心とした技術などを毎日更新でお伝えしてます。
では、また次回。
今回紹介した製品
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