3Dプリント品の接着4方式と分割接合テクニック|180mmの壁を超えて大きな作品を作る方法🧩

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まー3DBOX
3Dプリンタ、3Dモデルなど

A1 miniのビルドプレートは180mm角。でも接着と接合のテクニックがあれば、大きさの制限はなくなります。

こんにちは、まーです!

後加工マスター全4回シリーズの最終回をお届けします。第1回で「磨く」、第2回で「埋める」、第3回で「塗る」、ときて、最終回の今日は「くっつける」がテーマです。

3Dプリンターって、作れるサイズに物理的な制限があるじゃないですか。A1 miniなら180mm x 180mm x 180mm。これより大きいものを作ろうと思ったら、分割して印刷して、あとから接着するしかないんですよね。

「でも繋ぎ目が見えちゃうんじゃないの?」って心配になりますよね。大丈夫です。正しい接着方法と、このシリーズで学んだ後加工テクニックを組み合わせれば、どこで分割したかわからないレベルに仕上がります。今日はその具体的な方法を全部お伝えしますね。

前回のおさらい ─ 塗装の鉄則

前回は塗装について詳しくお話ししました。ポイントを3つ振り返っておきますね。

①塗料は3種類。アクリル、ラッカー、エナメル。PLAユーザーはまずアクリルから始めるのが安全。ラッカーは発色最強だけど、必ずサーフェイサーの上から塗ること

②スプレー缶は距離25cmから30cm、薄塗り2回から3回。1回で仕上げようとすると液垂れして台無しになる

③クリアコートで保護と質感をコントロール。光沢、半光沢、つや消しの3種類を使い分ける

塗装までの工程が終わっていれば、パーツの表面はもうキレイに仕上がっているはずです。今日はそのパーツ同士を「くっつける」話と、そもそも大きな作品を「分割して作る」話をしていきます。

接着4方式の概要

3Dプリント品の接着って、実は正解が1つじゃないんですよ。大きく4つの方式があって、素材と用途で使い分ける必要があります。

①瞬間接着剤(CA) ─ 数秒から数分で仮固定できるので手軽。修理や仮止めに最適。ただし衝撃には弱い

②エポキシ接着剤 ─ A液とB液を混ぜて使うタイプ。硬化まで時間がかかる分、位置の微調整ができる。異種素材同士の接着にも有力

③溶剤型接着剤 ─ 素材の表面を溶かして接合する方式。接着というより「溶着」に近い考え方で、条件が合えば強い接合が期待できる。ただし素材との相性があるので、必ず端材でテストしてから使うこと

④3Dペンウェルディング ─ 同じフィラメントを溶かして接合部に充填する、金属溶接に近いテクニック。追加の接着剤がいらないのが嬉しいポイント

次から、それぞれの具体的な話をしていきますね。

瞬間接着剤 ─ ロックタイトピンポインター

まず瞬間接着剤から。僕のおすすめは「ロックタイト ピンポインター」です。

瞬着って世の中にたくさん種類があるんですけど、このピンポインターは極細ノズルがついていて精密な塗布ができるのが特徴なんですよね。普通のアロンアルフアだと出しすぎちゃったり、意図しない場所にはみ出したりするんですけど、ピンポインターなら狙ったところにピンポイントで塗れます。

硬化時間は製品にもよりますが、数秒から数分で仮固定されます。完全硬化には一晩置くと安心です。

ただし瞬着にはいくつか弱点があって、衝撃に弱いんですよ。落としたら接合面からパキッと割れることがある。あと隙間が大きい接合面には向きません。

重曹テクニック ─ 隙間充填の裏ワザ

隙間を埋めたい場合は、模型界隈で知られている重曹テクニックが使えます。瞬着用の重曹を振りかけてからCAを垂らすと一瞬で固まって隙間を埋めてくれるんですよね。

ただし重曹併用は発熱や白化(ブルーミング現象)が出やすいので、見える面では少量テストしてからやるのがおすすめです。

PLA向け溶剤接着 ─ アクリサンデーの実態

PLAの接着で、コミュニティで使われている方法の1つとして溶剤型の接着があります。「アクリサンデー接着剤」もその系統です。

これ、もともとアクリル板を接着するための溶剤型接着剤で、メーカー公式の対応素材はアクリル、PET、ABS、ポリカーボネートなどです。PLAは公式の対応素材には入っていません。

ただ、3DプリントのコミュニティではPLAに使っている作例が報告されていて、主成分のジクロロメタンがPLAの表面にも作用するケースがあるようです。うまくいけば溶着に近い接合になることもあると言われていますが、効果はフィラメントの銘柄や条件によって差が出ます。使う場合は必ず端材で十分にテストしてから判断してください。

安全面の注意 ─ ジクロロメタンの毒性

そして安全面が非常に重要です。ジクロロメタンは毒性が高い溶剤で、アメリカでは規制が強化されているほどです。必ず換気の良い場所で使うこと、保護手袋をすること、素手では絶対に触らないこと。家庭環境で気軽に使う溶剤ではないということは覚えておいてください。

正直なところ、PLAの接着はまず瞬着やエポキシから試すのが無難です。溶剤型は「それでは満足できない場合の上級者向けオプション」くらいに位置づけてもらうのがいいと思います。

エポキシ接着剤 ─ 異種素材もOK

エポキシ接着剤についてもお話しします。「セメダイン EP001N」は約800円で手に入るA液B液混合タイプです。

エポキシの強みは3つ。

①異種素材の接着で有力な選択肢になること。瞬着や溶剤型では難しい素材の組み合わせでも、エポキシなら対応できるケースが多い

②隙間がある接合面にも使いやすいこと

③瞬着と違って、硬化までの時間に余裕があるので位置の微調整ができること。公式では23度で作業時間は20分以内とされていて、瞬着よりずっと落ち着いて作業できます

PLAの接着なら、まず瞬着かエポキシから始めるのが安心です。PETGの接着は素材の特性上ちょっと難しくて、接着剤との相性差が大きいんですよ。迷ったらエポキシを第一候補にして、端材で比較テストしてみてください。

3Dペンウェルディング ─ 同素材を溶接する

次に紹介するのが「3Dペンウェルディング」です。知らない方も多いと思うんですけど、かなり面白いテクニックなんですよ。

3Dペンっていうのは、フィラメントを溶かして空中にお絵描きできるペンなんですけど、このペンを接合に使うんです。考え方は金属溶接に近くて、溶接棒の代わりにフィラメントを使うイメージ。

やり方は3ステップです。

①まず接合面にV字の溝を彫る。ヤスリやリューターで断面をV字にカット。V字にする理由は、フィラメントが食い込む面積を増やして強度を上げるため

②3Dペンのノズルを数秒当てて母材を軽く溶かしたあと、同じフィラメントをゆっくり流し込んでいく。焦って一気にやると気泡が入るので丁寧にやるのがコツ

③冷えたらサンディングで接合面を研磨して跡を消す。ここは第1回で学んだテクニックがそのまま活きますね

3Dペンの選び方と使い方のコツ

3Dペンは温度調節ができるタイプを選んでください。PLAの適正温度に合わせられるのが大事です。PLAなら200度から210度くらい。

大事なのは「ノズルを母材に数秒押し当てる」こと。これで母材の表面がわずかに溶けて、そこに新しいフィラメントが融合するんです。母材が溶けてなければただ「乗せた」だけで強度が出ない。この「母材を溶かす」一手間が、接着剤なしでも接合できる秘訣なんですよね。

フィラメントは余っているはずなので、ペンさえ買えばすぐ始められますよ。

分割接合 ─ 180mmの壁を超える

ここからが今日のメインテーマの1つ、分割接合の話です。

A1 miniのビルドボリュームは180mm角。ヘルメット、コスプレの武器、大きな花瓶、インテリア雑貨。これを超えるサイズのものを作りたい場面って結構ありますよね。

ここで活躍するのがBambu Studioの「カット」機能です。モデルを読み込んで、カットで切断面を指定して分割できます。さらにプラグやダウエルといったコネクタを追加すれば、ピンとホールで位置決めができます。スナップコネクタは着脱用途にも使えます。

手で合わせると絶対にズレるんですけど、コネクタを使えば「カチッ」と位置が決まるんですよ。

分割接合ワークフロー ─ 6ステップ

分割接合の具体的なワークフローを6ステップでお伝えします。

①Bambu Studioのカット機能でモデルを分割し、必要ならプラグやダウエルなどのコネクタを追加する

②各パーツをそれぞれ印刷。分割面が底になるように配置すると、接合面がキレイに仕上がります

③接着剤で接合。PLAならまず瞬着やエポキシから。溶剤型も選択肢ですが端材テスト必須

④接合面の段差や隙間をパテで充填。前回までに紹介したスプレーパテや手塗りパテの出番

⑤サンディングで接合面を平滑にする

⑥サーフェイサーを吹いてから塗装

さらに強度を上げたい場合は、接着後に裏側から3Dペンウェルディングで補強するのがおすすめです。表側はパテとサーフェイサーで見た目をキレイに、裏側は3Dペンで強度を確保。この「表はキレイに、裏はガッチリ」の組み合わせが最強ですね。

このシリーズ全4回のテクニックが全部つながってくるのがわかると思います。

アセトンスムージング ─ ABS限定の番外編

番外編として「アセトンスムージング」にも触れておきます。

これは主にABSやASA向けのテクニックで、密閉容器にアセトンを入れて、その蒸気でパーツの表面を化学的に溶かしてツルツルにする方法です。かなり滑らかな仕上がりになりますが、扱いを間違えると危険。アセトンは可燃性が高いので、必ず換気、火気厳禁、加熱しない、やりすぎない、を守ってください。

ちなみにA1 miniではABS/ASAはメーカー非推奨の素材です。A1 miniの推奨素材はPLA、PETG、TPU、PVAなので、多くのA1 miniユーザーはPLAかPETGを使っていると思います。

残念ながらPLAやPETGは一般的にアセトン平滑化には向きません。PLAは物理的な後加工、サンディングとパテの組み合わせが王道で安全です。

PLA向けの現実的な選択肢

化学スムージングが使えないPLAで、現実的な選択肢として有力な方法は主に2つあります。

①物理研磨 ─ サンディング、パテ、サーフェイサーの3ステップ。このシリーズの第1回と第2回でたっぷりお話しした内容。地道だけど確実で安全。どんな形状のパーツにも対応できるし、仕上がりのコントロールも自分次第

②XTC-3D ─ エポキシ系のコーティング剤で、刷毛で塗ると表面張力で自動的に平滑になる。広い面を一気に処理したい時はこちらが効率的

この2つを組み合わせるのが、PLAの後加工で現実的で再現性の高い方法だと思ってください。まず大きな凹みはパテで埋めて、全体をXTC-3Dでコーティングして、軽くサンディングしてサーフェイサー。この流れなら、FDMの積層痕はほとんど気にならないレベルまで消せます。

まず揃えるべき道具5点

シリーズ全体を通して「結局、最初に何を買えばいいの?」っていう質問に答えます。道具5点です。

①ゴッドハンド「神ヤス」 ─ サンディングの基本ツール

②ホルツ スプレーパテ ─ 積層痕と隙間を埋める

③タミヤ「ファインサーフェイサーL」 ─ 塗装下地の必需品

④ロックタイト「ピンポインター」 ─ 精密塗布の瞬間接着剤

⑤タミヤスプレー お好みの色

この5つで「磨く、埋める、塗る、くっつける」の全工程に対応できます。全部合わせても数千円で揃いますよ。慣れたらアクリサンデーや3Dペン、XTC-3Dを足していけばいい。まずはこの5点でスタートしましょう。

シリーズ全体まとめ ─ 4回で完全カバー

全4回のシリーズを振り返りましょう。

第1回「磨く」 ─ 番手の2倍ルール、ウェットサンディング、PLAのガラス転移温度に注意すること

第2回「埋める・下地を作る」 ─ スプレーパテや手塗りパテ、XTC-3Dを使った下地づくりと、サーフェイサーで下地を完成させること

第3回「塗る」 ─ アクリル、ラッカー、エナメルの使い分け、薄塗り複数回の鉄則、クリアコートでの保護

第4回「くっつける」(今回) ─ 瞬着、エポキシ、溶剤型、3Dペンウェルディングの4方式と、分割接合のワークフロー

この4回で「印刷して終わり」から「作品に仕上げる」までの全工程をカバーできました。後加工って聞くと難しそうに感じるかもしれないですけど、1つ1つのステップは決して難しくないんですよ。大事なのは手を動かすことです。

英語圏のYouTubeには後加工のBefore/Afterコンテンツがたくさんあって、「Prop Making」っていうジャンルが確立されているくらいなんですよね。一方で日本語圏を見ると、この分野はまだ体系的な情報が少ないと感じています。だからこそ情報を共有する価値があると思って、このシリーズを作りました。「印刷して終わり」じゃなくて「作品に仕上げる」。これが3Dプリンターの次のステップだと僕は思っています。

全4回にわたる後加工マスターシリーズ、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

「磨く、埋める、塗る、くっつける」。この4つのスキルがあれば、3Dプリンターで作れるものの幅が格段に広がります。後加工って最初はめんどくさく感じるかもしれないんですけど、一度やってみるとハマるんですよ。まずは小さなパーツから試してみてください。失敗しても大丈夫。フィラメント代しかかからないのが3Dプリントのいいところですから。

では、また次回。

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